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コワーキングの3つのメリットと課題

Posted by admin at 8:53 日時 2012/06/16

PAX  Coworking GTD (Getting Things Done) Workshop

PAX Coworkingの様子。

新しい働き方として注目を集めているコワーキング(Coworking)。このコワーキングがもたらすメリットを3つのキーワードでまとめてみました。

Fast

新しいビジネスのアイディアがあっても、一人では進められないってことはたくさんあります。ビジネスのアイディアと言えば大仰に聞こえますが、たとえばこんなアプリがあったら、こんなウェブサービスがあったら使われるんじゃないかというアイディアがあっても、技術力がない、あるいはデザイン力が無いというハードルがあるという場合。エンジニアやデザイナーを雇用しますか?面接をして給料を決めて?それには大変なコストを伴います。スピード感を持ってアイディアを形にし、リスクを少なく実現するには、プロジェクトベースで人を集め、リリースしたらいったん解散するというような、ハリウッド的な仕事のしかたが求められます。

HTML5を中心に様々な最新技術が花盛りのウェブの世界。個人で習得できる技術には限界があります。そのため、私が手がけているようなウェブサイトの受託制作であっても、やはりプロジェクトベースで人を集めた方がスピーディーに、かつ高いクオリティの成果物を納品できることは多いです。

コワーキングスペースは、このようなコラボレーションの場として機能します。普段のコワーキングスペースでの雑談などから、その人がどんな仕事をしているかだけでなく、仕事に対する姿勢や人間性も分かってきます。人を探している方にとっては、やはりそういう情報は重要なのではないでしょうか。また、自分の技術や経験を活かしたいと思っている方も、コワーキングスペースでの会話の中から、自分が活かされるアイディアを持っている人に出会うこともできると思います。回りくどいように思うかもしれませんが、実際にはコワーキングスペースを中心に色々なコラボレーションが起こっていることを見ると、仕事のスピードを加速するための一つの装置なのだと思います。

Slow

コラボレーションで新しい動きをどんどん起こしていくような積極的なメリットだけでなく、長期的な視点でもコワーキングスペースは注目されています。生産性を高めるには、仕事環境はとても重要です。仕事環境とは、オフィス自体の雰囲気や設備・アクセス、そして一緒に働く仲間です。カフェで仕事をする方もおられますが、仕事環境は基本的に一過性のものではなく毎日利用するものですから、いい環境で仕事をしたいものです。

コワーキングスペースは場所によってオーナーや中心的な利用者の好みで、いわゆるビジネスユースのオフィスのような内装だったり、おしゃれなカフェのような内装だったり、工房のような雑然とした雰囲気だったりしますので、好みで選んだり気分で場所を変えたりもできます。

そして、コワーキングスペースには中心的な利用者を中心にした仲間ができます。こうした仲間の存在は、私のような事務所を持たない個人事業主を孤独から救ってくれます。

「一緒に働く」とは、「同じ場所で働く」「同じビジネスを共同で行う」の2つの側面がありますが、インターネットによってそれぞれ別に満たすことが可能になりました。会社の隣の席の人とSkypeチャットで連絡しているという笑い話もあるくらい、コミュニケーション手段は日々進歩していて、ビジネス上のやり取りは直接会わなくてもできるようになっています。オフィスに憧れて会社に入る、業務内容に興味はない、と言うよりよほど健全になりつつあるのではないかなあと思っています。

あとは、働き方のサステナビリティもコワーキング利用者のなかでは大きなキーワードでしょう。仕事と生活をどうやって両立させるか、特に子育てをしながら働くにはどうすればいいか。私はまだ独身なのであまり語る内容はないのですが、こういったテーマに興味がある方は夫婦でコワーキングスペースを運営されているJuso Coworkingを訪ねてみてはいかがでしょうか。私もよく利用します。

Think

コワーキングスペースでそんなに人に会って、いったい何を話すの?そこに何の意味があるの?という疑問をお持ちの方も多いかも、と思います。しかし、人に話すということは価値です。これは実感してみないとわからないかもしれません。

例えば、エレベーター・プレゼンテーションという言葉があります。エレベーターであなたのビジネスに理想的な投資家と一緒に乗り合わせたとき、エレベーターが到着するまでに自分の考えるビジネスを説明できますか?というお話です。この話は、資金調達を必要としているスタートアップ起業家だけの問題ではなく、ビジネスに関わるひとはみな意識しておくべきだと思っています。自分の業界の最新の話題に対する自分の見解を1分で初めて会う人に話せますか?

私が手がけるウェブの世界でも、日々新しい技術やデザイントレンドが生まれます。それについてどう思う?と話題を振られて1分でまとめて話せるでしょうか。また、閉じた世界の技術の話題を、業界の動き、世界の動きと合わせて考え、伸びていく技術かどうか、そこにビジネスチャンスがあるかどうか、議論できるでしょうか?これに応えるは、普段から情報をただ入手するだけではなく、日々「考える」ということが重要です。また、色々な人との会話の中で考えが深まるということもたくさんあります。

こうした「考える」という行いを普段から様々な人との会話の中で繰り返していくことで、自分なりの指針を持って業界を渡っていく糧になり、新たなコラボレーションが生まれるきっかけにもなります。自分のようなフリーランスの人間にはこういう思考の機会はとても貴重で、価値のあるものだと感じますし、これってフリーランスの人間に限らないよね、大きな組織に属していても必要なことだよね、と思います。

コワーキングにおける課題

このようにたくさんのメリットがあるコワーキングという働き方ですが、もちろん課題もたくさんあります。どう一過性で終わらせないかというのは最大の課題です。持続できる働き方でないと、Fast, Slow, Thinkの3つを満たすことは出来ません。特にSlowかな。継続的な仕組みにするにはどういう運営が求められるのか、コワーキングスペースのオーナーだけでなく利用者も含めて日々議論がなされています。

その他に現実的な問題として、情報のセキュリティをどう担保するか。利用者の身元をしっかり確認すべきか、そうでないか。コワーキングスペースでやっていいこと、ダメなことの制限をどこで引くか。などなど。

これらはコワーキングスペースの性格やオーナーの方針、参加者の層にもよります。コワーキングスペースの中でも色んな多様性があり、それぞれの工夫で改善し、それをコワーキングに関わる人同士で情報共有し、改善に向けて動いています。

最近コワーキングに対する懸念がネット上で色々と言われていますが、そのどれもコワーキング利用者の間ではずっと前から言われていることです。コワーキングをより良くしていくにはどうすればいいか、改めて関係者が考える機会としてコワーキング・カンファレンス東京というイベントも開催されます。6月16日、今日です!コワーキングに少しでも興味があるという方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。働き方について考えるすべての人に刺激的なカンファレンスとなることでしょう。と、ステマを終えたところで筆を置きたいと思います。

イベントレポートや、カンファレンス参加のため東京滞在中に利用したコワーキングスペースの紹介は、改めてブログで紹介します!

つながりの仕事術~「コワーキング」を始めよう (洋泉社新書y)

  • 著者/訳者:佐谷 恭 藤木 穣 中谷 健一
  • 出版社:洋泉社( 2012-05-10 )
  • 新書:189 ページ
  • ISBN-10 : 4862489168
  • ISBN-13 : 9784862489166
  • 定価:¥ 864

さらに余談ですが、3つのキーワードをまとめたあとにググってみたら、近いタイトルの本を発見。読んでみたいけど、英語かぁ。。

Thinking, Fast and Slow

  • 著者/訳者:Daniel Kahneman
  • 出版社:Farrar Straus & Giroux (T)( 2011-10-25 )
  • ハードカバー:499 ページ
  • ISBN-10 : 9780374275631
  • ISBN-13 : 9780374275631
  • 定価:¥ 3,989

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