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日本でもフリーエージェント社会が到来する

Posted by admin at 9:13 日時 2010/11/17

Essaouirra
Creative Commons License photo credit: marfis75

アメリカはおおむね日本の数歩先を歩いています。アメリカの流行を日本にいちはやく輸入して展開するタイムマシン経営という言葉があるように、アメリカで流行ったサービスはかなりの確率で日本でも流行るのが通説です。この法則は、働き方についても言えるのかもしれません。アメリカではすでに労働人口の4分の1がフリーエージェントであるというのです*1

アメリカでは組織人間が主流だった?

アメリカ人は個人主義というイメージがありますが、アメリカの労働人口の中心を占めているのは組織のために個性を殺し組織に忠誠を誓う男性中心の組織人間なのです。ダニエル・ピンク『フリーエージェント社会の到来 「雇われない生き方」は何を変えるか』でアメリカの組織人間、オーガニゼーション・マンを紹介していますが、どこの日本企業かと思うような典型的な仕事人間でびっくりしました。ところが、この状況はすでに変わりつつあるといいます。

ピンクは、アメリカでは急速にフリーエージェントが「アメリカの労働者の新しいモデルになり、経済の新しいシンボルになりつつある」と指摘しています。そして実際に、アメリカの労働人口はフリーエージェント・ネーション(ダニエル・ピンクは急速に拡大するフリーエージェントの社会をこう呼ぶ)へと移行しつつあるのです。

ピンクがフリーエージェント社会の到来を書いてから9年が経ちますが、経済危機の影響がすくなかった日本ではまだ労働人口の大移動は起きていないようです。とはいえ、大学生の就職内定率が就職氷河期を下回った*2という調査もあるように、このまましばらく正社員採用は冷え込み、すぐには回復しないでしょう。そうなればフリーエージェント(フリーランス)という働き方が一時的で不本意な働き方ではなく、積極的に選択される新しい働き方として認知されるのは確実だと思います。メディアが派遣切りをセンセーショナルに報じている間に、地殻変動はすでに始まっているのです。

ウェブ制作の世界はハリウッド・スタイルが主流になる?

地殻変動はどこから始まっているのでしょうか。やはりWebを生業にしている人間は、フリーエージェントの世界に飛び込むための参入障壁が低いと思います。ノートパソコンとインターネット環境さえあれば仕事ができるからです。しかし、参入障壁が低いだけではありません。ピンクはオーガニゼーション・マンからフリーエージェントへの移行を「ハリウッドの世界に変わり始めた」と表現しています。

大勢の個人を常に戦力として抱える固定的な大組織は、戦力が常に入れ替わる小規模で柔軟なネットワークに取って変わられようとしている。新しいウェブサイト、新しい家電製品、新しい雑誌、新しいビル、新しい広告キャンペーン、新しい薬品……新製品や新サービスの成否がプロジェクトに携わる人間の知力、創造性、技能、熱意にかかっている場合、いまやハリウッド・モデルは常識になりつつある。

ここで挙げられている例のうち、日本ではまだハリウッド・モデルで開発するには難しそうなものが幾つか含まれていますが(家電製品は最たるもの)、ウェブサイトの立ち上げは制作会社という形態よりハリウッド・モデルのほうが向いています。

実際、中小規模のウェブ制作会社が内製でできることには限界があります。HTMLとCSSとFlashが分かっていればよかった時代は過ぎ、Webに求められる役割がより大きく多様になるにつれ、さまざまな技術や知識、ノウハウが必要になってきており、それはとうてい数人の人間でカバーできるようなものではないからです。

また、変化の激しいインターネットの世界において、技術は蓄積されるものではなく常に更新されるものです。個人が勉強に費やせる時間は限られているので、網羅的に勉強していては全くインターネットの世界の変化についていけず、古くさいWebサイトが一人で作れるだけ、という悲惨な状況になります。つまり、どうしても何かの分野のエキスパートになり、他の分野のエキスパートと共同で仕事をする必要があります。

技術だけの話ではなく、Webは企業と顧客のコミュニケーションの中心になりつつありますので、デザイナーに求められる領域もコミュニケーションのキーとなるコンセプトデザインから細かなインターフェイスデザインまで、ライターに求められる領域もコンセプトメイキングからソーシャル・ネットワークでの書き込みにいたるまで多様化しています。

こういった様々な理由から、メンバーの固定された会社形態ではなかなかウェブサイト制作は難しくなってくると思いますが、一方では外注費は抑えろと現場には圧力がかかります。そんな努力はばからしいとばかりに、Webを生業にしている人からフリーエージェントの世界に積極的に参入する人は増えるだろうと思います。

会社をやめる人間のほうが忠誠心は強い?

会社を辞め個人で仕事をするフリーエージェントは、忠誠心を重んじない一匹狼なのでしょうか?
この問いに対しても、ピンクがフリーエージェントに対する調査の上に否定的な答えを出しています。フリーエージェントは会社に対して忠誠心を感じない代わりに、4つの新しい忠誠心を持っています。

  1. チームや同僚、元の同僚に対する忠誠心
  2. 職業や業界に対する忠誠心
  3. 顧客に対する忠誠心
  4. 家族や友人への忠誠心

これらの忠誠心がコワーキングを必要とするはずです。同業者との有益な情報交換や、質の高いサイトを制作するための共同プロジェクトの立ち上げ、また家族との時間を大切にするための仕事時間の切り替えのために役立つからです。

個人的には、さらに地域に対する忠誠心も追加していいかな、と思っています。もっとも、特定の生まれた地域に縛られるのではなく、いろんな土地に対する緩やかな愛着とも言うべきものになるのではないかと思いますが、またの機会に書こうと思います。これもコワーキング・スペースに求められる機能になっていくのだろうと思っています。

働き方のチェンジはまだまだこれから?

何回かに分けて、なぜ自分がフリーランスになったか、そしてコワーキングについて書いてきましたが、どちらも僕はまだスタートしたばかりです。うまくいく保証はありませんし、えらそうに語れるような段階ではありません。社会の変化も、民主党ががんばって正社員雇用を維持し、結果フリーエージェント・ネーションが日本に根づくのが先になるかもしれません。でも、もう流れは変わらないと思っています。そう思う根拠もダニエル・ピンクの本だけではなく、さまざまな識者やブロガーの納得のいく説明がありますし、もっと「この情報化社会に営業原価がそんなにかかるか?」というようなささいな疑問も後押ししています。

願わくばフリーエージェント・ネーションに参入したいと思っている方の役に立つように、今後も考えたことや分かったことを積極的に書いていこうと思っています。


ダニエル・ピンク インタビュー

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

  • 著者/訳者:ダニエル ピンク 玄田 有史
  • 出版社:ダイヤモンド社( 2002-04 )
  • 単行本:394 ページ
  • ISBN-10 : 4478190445
  • ISBN-13 : 9784478190449
  • 定価:¥ 2,376

参考URL

十三コワーキングの宣伝もしとこ。神戸に続いて大阪でもコワーキング・スペースが立ち上げられます。興味があるので見に行こうと思っています。

JUSOCoWorkingプレオープン☆を祝おうの会


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